専門家からのアドバイス
サイロ化した運用からシグナル主導の戦略への転換

2026年6月4日 | Anne Harrell、戦略プロジェクト担当シニアディレクター、Pacvue
パートナーの視点
パートナーの視点
「パートナーの視点」は、Amazon Adsパートナーネットワークに参加する広告リーダーたちが、クライアントの成果につながる戦略やヒントについて直接得たインサイトをお届けするシリーズです。今回は、Anne Harrell氏(Pacvueの戦略プロジェクト担当シニアディレクター)が、サイロ化したストリーミングTVの運用をシグナル主導の戦略へと転換するための5つの方法を紹介します。
ストリーミングTV(STV)、デマンドサイドプラットフォーム、リテールメディアは、現代のメディアミックスに今や欠かせない要素ですが、その運用は多くの広告主様にとって依然サイロ化されている状態です。キャンペーンはチャネルごとに計画されて、個別に測定され、オーディエンスが発見から購入へと至る実際のプロセスを反映しない短期的な指標に基づいて最適化されています。その結果は、インプレッションの無駄、オーディエンスの重複、ラストタッチアトリビューションでは非効率に見えるアッパーファネルへの投資という、おなじみのものです。
本質的に言って、これはチャネルの問題ではなく、シグナルの断片化の問題です。パフォーマンスを把握するために必要なインサイトはあってもフォーマットごとに分断されているため、認知から検討へのつながりや、ミッドファネルの活動からコンバージョンへの転換を把握することが困難です。現実問題として、このような断片化はビジネス全体に複合的なコストを生みます。売上リスク、非効率な支出、人件費の負担、継続的な利益の損失です。Pacvueではこれを「サイロ税」と呼んでいます。ブランドが今日直面している最も根強い課題の1つです。コストはオーディエンスのプランニングと効果測定にとどまりません。チャネルをまたいでシグナルを連携しないと、お買い物中のお客様が購買プロセスのどの段階にいるかに合わせてクリエイティブを適応できず、各広告の関連性は本来よりも低下します。
以下の5つの方法では、主要な広告主様の実際の成果をもとに、運用がサイロ化されているストリーミングTVをシグナル主導のシステムへと転換する方法をご紹介します。
1.ファーストパーティシグナルを活用した基盤の構築
「インマーケット」や「ルックアライク」などのデフォルトのオーディエンスプリセットは、精度ではなくスケールを重視して構築されています。予算が拡大するにつれ、既存のオーディエンスとの重複も増え、パフォーマンスが頭打ちになります。
より効果的なアプローチは、CRMやWebサイトのアクティビティなどのソースから得たファーストパーティの行動シグナルと、Amazon Marketing Cloud(AMC)独自のシグナル(購買意向、閲覧シグナル、クロスチャネルの広告接触など)を組み合わせることです。このように組み合わせた基盤により、リーチするオーディエンスと除外するオーディエンスを同時に定義できます。
ファーストパーティインサイトをオーディエンスの拡張と除外の両方に活用することで、獲得効率が2つの面で向上します。拡張では価値の高いお客様と行動が似た新規オーディエンスにリーチでき、除外ではオーガニックでコンバージョンする可能性が高いオーディエンスへの有料メディアの費用を抑えることができます。
実際には、最新購入日や親和性ではなく、購買パターンや興味・関心などの豊富なショッピングシグナルとブラウジングシグナルを活用して、AMCオーディエンスを作成することになります。次に、それらのオーディエンスをAmazon DSPと検索の両方で拡張と除外に活用し、オーディエンスシグナルの変化に合わせてセグメントを継続的に更新します。あるビューティブランドでは、このアプローチにより、標準的なディスプレイ認知キャンペーンと比較して、ブランド新規顧客のROASが17倍に向上し、ブランド検索あたりのコストが87%削減されました。1
上級者向けヒント: ファーストパーティインサイトは、置き換えとしてではなく絞り込みのレイヤーとして活用することで、最大限の効果を発揮します。AMCから得たシグナル(商品詳細ページを閲覧したものの、まだ購入に至っていないオーディエンスなど)を標準のインマーケットオーディエンスに重ね合わせることで、スケールを維持しながら精度を高めることができます。
2.チャネルの並列運用ではなくオーディエンスのシーケンス化
チャネルを一斉に有効化することは比較的簡単です。それらをシーケンスとして組み合わせることはより困難ですが、より価値の高い取り組みです。
各チャネルで独立して最適化を行うと、オーディエンスの接触が断片化します。お買い物中のお客様がスポンサー広告を3回見るとしても、それらの広告を信頼の置けるものと感じるうえで役立つアッパーファネルのストーリーに接触していない可能性があります。シーケンス化によってあるステージのシグナルを次のステージで活用すれば、この問題は解決します。
実際には、これはメディアタイプとチャネル間で露出を調整することを指します。どの広告フォーマットの組み合わせと露出経路を使うと下流でのはたらきかけが最大化するかをAMCで特定したら、チャネルごとに最適化するのではなく、オーディエンスをシーケンスにするための青写真としてその組み合わせを活用できます。ブランドは、アッパーファネルでのはたらきかけからリマーケティングプールを構築し(例:Prime Videoの広告視聴者)、毎回のインタラクションで前回の内容を補強するようにクリエイティブを調整できます。ここで、Amazon Adsのダイナミッククリエイティブの最適化(DCO)とレスポンシブeコマースクリエイティブ(REC)がシグナルに関わってきます。下流での成果が最も高い露出経路がAMCで明らかになれば、それはリマーケティングの対象だけでなく、表示する内容にも反映されるべきです。あるペットブランドのキャンペーンでは、複数フォーマットを組み合わせた広告に接触したオーディエンスは、単一フォーマットのみに接触したオーディエンスと比べて、ブランドを検索する可能性が290倍高いことがAMCの経路分析で明らかになりました。2
3.シグナルエンジンとしてのストリーミングTVの活用
ストリーミングTVは、多くの場合、インプレッション、完了率、またはブランドの向上率で評価されます。これらの指標が検索、コンバージョン、新規顧客獲得といった重要な下流の成果と結び付けられることはまれです。勝機は、ストリーミングTVをシグナル生成源として活用し、ロワーファネルのパフォーマンスを強化することにあります。ストリーミングTVのオーディエンスシグナルをAMCで収集し、ロワーファネルのチャネル群で活用すれば、アッパーファネルでの接触は、リーチや認知を高める単独の役割ではなくなり、下流での成果を複合的に高める効果を発揮し始めます。動画の視聴者は、はたらきかけの対象となるオーディエンスセグメントとなり、スポンサー広告やAmazon DSPでコンバージョンを図れます。地ならしされた購買意図の高いオーディエンスとして、下流での毎回のインプレッションの効果が高まります。マルチタッチアトリビューションを使用すると、ブランドはファネル上部での露出がロワーファネルのチャネルの効率にどのような影響を与えるかを測定できます。
同じシグナルをクリエイティブに活用することもできます。STVに接触したオーディエンスをAMCで特定すると、DCOはその過去のはたらきかけを反映した広告を下流で配信できます。オーディエンスがシーケンスのどの段階にいるかに応じて、幅広いブランドメッセージから、よりコンバージョン重視のクリエイティブへと切り替えることが可能です。
ヘルスおよびウェルネスのある大手ブランドは、このアプローチの効果を実証しています。ストリーミングTVとPrime Videoの広告から得ていたサイロ状のインサイトをPacvueで統合し、スポンサー広告とAmazon DSPを通じて重複オーディエンスを活性化した結果、Amazon DSPによるROASが前年比58%増加し、ブランド新規顧客の売上が45%向上しました。3
上級者向けヒント: ストリーミングTVの実態を示すKPIが2つあります。1つは間接的影響による購入で、ストリーミングTVでの接触がロワーファネルのチャネルでのコンバージョンにつながる頻度を測定します。もう1つはマルチタッチROASで、STVで最初に接触したオーディエンスが下流でより効率的にコンバージョンするかどうかを測定します。
4.適切な種類の重複の測定
オーディエンスの重複は、すべてが同じように生じるわけではありません。アッパーファイルの2つのフォーマットが同じオーディエンスにリーチする場合、それは無駄な費用です。アッパーファネルとロワーファネルのキャンペーンが同じオーディエンスで重複している場合、それは真のファネルが形成されているシグナルです。このような重複オーディエンスは、単一の広告のみに接触したオーディエンスと比べて、一貫してより効率的にコンバージョンします。この区別は、どの広告フォーマットを拡大、統合、または削減するかを決定する際に、重要性が最も高まります。
ブランドが新しい広告フォーマットを追加する際、AMCは、各フォーマットでファネルにインクリメンタルリーチが生じているのか、それとも他の場所ですでに獲得済みのオーディエンスに重複して配信しているに過ぎないのかを把握できます。最も健全なパターンは、アッパーファネルの各フォーマット間の重複が少なく、それぞれが新たなオーディエンスへのリーチが拡大しており、かつアッパーファネルとロワーファネルのキャンペーン間の重複が大きい状態です。これは、認知への投資から、コンバージョンにつながるチャネルに向けて、オーディエンスが正しく引き渡されているシグナルです。
この分析を四半期ごとに実施すると、どのフォーマットが費用対効果を発揮しているかが、単一チャネルのROAS(広告費用対効果)レポートよりもはるかに明確に把握できます。
5.シグナル主導の最適化でサイクルを完結
どれほど洗練された戦略であっても、インサイトが運用に活かされなければ、行き詰まってしまいます。AMC、コマースインサイト、チャネルパフォーマンスは常にシグナルを生成していますが、運用レイヤーへのフィードバックループがなければ、それらのシグナルはダッシュボードにとどまったままになります。成功を収めるには、ブランドはキャンペーンの終了時に限らず定期的に露出経路を見直し、チャネルレベルだけでなくフルファネルのパフォーマンスに基づいて予算を再配分する必要があります。入札額や予算などの施策の調整には自動化とルールベースの最適化を活用し、マルチタッチ経路分析は規則に従って毎月行う見直しに活用してください。
継続的なテストと最適化を通じてフルファネルインサイトを活用している広告主様は、固定的な戦略をとる広告主様よりも優れた成果を上げています。実際に、これにより測定可能な効率改善が実現しています。たとえば、あるヘアケアの大手ブランドでは、最適化されたアプローチを拡大することで、商品詳細ページビューあたりのコストが27%低下し、ブランド新規顧客のパフォーマンスも大幅に向上しました。
チャネルだけでなく、シグナルをつなぐ
「サイロ税」は、効果測定上の課題であると同時に、パフォーマンスを制約する要因でもあります。それを削減するには、チャネルそのものだけでなく、メディアの背後にあるシグナルを連携させることが必要です。これらのシグナルが統合されると、ストリーミングTVは測定可能な需要を創出し、露出経路は調和したシーケンスとなり、インサイトは予算の用途を継続的に示します。
Amazon Adsは、これを実現するための以下のソリューションを提供しています。 AMC(効果測定レイヤー)、Amazon DSPとSTV(アクティベーションチャネル)、DCOとREC(クリエイティブレイヤー)です。これらを活用し、各シグナルを使ってより関連性の高い広告を実現します。サイロ税を削減するには、より多くのことをするのではなく、より連携した方法で取り組むことが重要です。
Amazon Adsパートナーとの提携は、Amazonストア内外でのビジネスの成長に役立つ可能性があります。Pacvueの詳細はこちら。
出典
1~3 パートナー提供データ、米国、2025年。
Anne Harrell、戦略プロジェクト担当シニアディレクター、Pacvue
Anne Harrell氏は、Pacvueのプロダクトエバンジェリズムおよびイネーブルメントチームの責任者です。デジタルおよびリテールメディアにおける10年以上の経験を活かし、Pacvueの大手エンタープライズブランドや代理店パートナーとの協業を通じてイノベーションを推進しています。