プロダクトマネジメントのレベルアップ: Kabir Bediが教えるコミュニケーション戦略

Kabir Bedi

Amazon Adsでは、効果的なコミュニケーションは単なるスキルではありません。テクニカルプロダクトマネージャー(PMT)の成功の基礎です。この記事は、当社の「プロダクトマネジメントのレベルアップ」シリーズの一部であり、PMTの職責におけるコミュニケーションの重要性について考察します。本稿では、Amazon Adsでの3年間を含め、Amazonでのさまざまな役職を11年間務めた経験を持つ、PMTのシニアマネージャーKabir Bediによるインサイトをご紹介します。

効果的なコミュニケーションの力

「プロダクトマネージャーとして、私たちは常にさまざまな利害関係者とコミュニケーションを行います。一生の間、私たちは眠っている時間よりもコミュニケーションしている時間のほうが長いと思っています」とKabirはジョークを飛ばします。彼は、テクノロジー企業のPMTの場合、対応しなければならない影響範囲が広いため、コミュニケーションはさらに重要であると言っています。

「PMTは、上層部、同業の利害関係者、自社のエンジニアリングチームや設計チーム、すべてのチームまたは自分のチームの他のPMT、さらには外部のお客様、クライアント、代理店などとも、非常に広い範囲でコミュニケーションを行います」。

この広範な相互作用のネットワークでは、自分に直接の権限がないことが多いため、コミュニケーションはPMTにとって望ましい結果の実現を可能にする最善のツールになります。Kabirは、これらのスキルが仕事面で役立つだけでなく、時が経つにつれて複合的な利益をもたらす基本的なライフスキルでもあると強調しています。

書面によるコミュニケーション: Amazonの方法

Amazonには独特なライティングカルチャーがあり、書面によるコミュニケーションが中心になっています。Kabirは次のように言います。「Jeff Bezosは、文章を作成することでプロダクトリーダーは思考をより明確にできるようになると言っています」。

Kabirは、書面による効果的なコミュニケーションに関して、いくつか重要なヒントを提供しています。

  • 明確な目標を明瞭に述べる: 読者の解釈を導くために、文書の目的を明示します。
  • 背景を設定する: 必要な背景情報を提供します。特に、十分な背景情報が欠けている可能性のあるリーダーたちのためにそうします。
  • 具体的に描写する: 紛らわしい文章や、「非常に」や「かなり」などの「あいまいな言葉」は避けます。
  • 能動態を使う: 能動態で表現すると、文章を短縮し、インパクトを残すことができます。
  • 簡潔にする: 「冗長さは美徳ではない」とKabirは強調しています。文章を短くし、言葉の数を減らします。
  • 主張をデータで裏付ける: ポイントを裏付けるには、定量的または定性的なデータを使用します。

効果的な文書作成に役立つ7つのステップ

Amazonのライティングカルチャーは当社の働き方の中心であり、書面による文書はあらゆるビジネス上の意思決定の基礎となります。Kabirが、自身のキャリアを通じて役立った、効果的な文書作成に関する7つのステップを詳しく説明します。

  • 予想する: 高品質の文書を書くには時間がかかることを認識する必要があります。
  • アウトラインを作成する: 基本的な構成やミニPRFAQ(プレスリリースとよくある質問、2~3段落)を作成して、アイデアを早い段階で共有します。
  • データを集める: インサイト、ユーザー調査、その他の関連性の高い情報を同時に収集します。
  • 最初の下書きを書く: 長さを気にせずに考えを紙に書き留めます。
  • 編集とカット: 下書きを適切な長さにするため、一部をカットします。
  • 共有とレビュー: チームや信頼性の高い利害関係者と共有して、フィードバックをもらいます。
  • フィードバックを取り入れる: 受け取った情報を反映させ、必要な修正を行います。

Kabirは、この徹底的なプロセスに時間を割くため、早めに取りかかることの重要性を強調しています。また、執筆の過程で同僚や利害関係者からフィードバックを求めることの価値を提唱しています。

口頭でのコミュニケーション: アートオブカリスマ

口頭でのコミュニケーションも同じように重要であり、信頼関係の構築をサポートする強力なツールです。これは、Amazon Adsのようなマトリクス環境にあるPMTにとって重要になります。Kabirは、「Cues: Master the Secret Language of Charismatic Communication(キューズ:カリスマ的コミュニケーションの秘密の言語をマスターする)」(Vanessa Van Edwards著)という本を推薦しています。この本では、カリスマ的なコミュニケーションを2つの重要な要素に分けています。

  • 温かさ: 協力的で、忍耐強く、共感できる存在という印象を与えること。
  • 受容力: 印象的で、パワフルで、頼りになる見た目。

Van Edwardsによると、目標はこれら2つの要素を両立させ、「信頼でき、友好的で、好感が持てる」と同時に、「有能で、スマートで、力強く」見せることです。 優れた口頭でのコミュニケーションは、権力なしに影響力を発揮するために不可欠です。これにより、PMTは自分の視点を明確に表現し、自分の考えを受け入れてもらうことができます。

また、Kabirは、コミュニケーター、つまりメッセージを伝える側の責任も強調し、こう述べています。「責任は伝える側にあり、受け取る側にはありません。私の仕事は、理解し、空気を読み、どのコミュニケーションスタイルが最も適切かを確認することです。話す相手はプロダクトマネージャーのグループでしょうか、それともリーダーたちにプレゼンテーションをするのでしょうか。 それぞれのグループが最も関心を持っているのは何でしょうか。 私の口頭でのコミュニケーションが話しているオーディエンスに適しているかを確認し、相手が私の話すことを理解していることを確認するのは私の責任です」。

口頭でのコミュニケーションのこうした面をマスターすれば、PMTは複雑な役割の状況をうまく乗り切るうえでの効果性を大幅に高めることができます。

リーダーたちとの関わり

Kabirはさらに、リーダーたちとの効果的なコミュニケーションの重要性を強調しています。副社長、上級副社長、取締役は、毎日多数の文書やメールを読んでいるため、彼らと明確かつ効果的にコミュニケーションを取ることは大切です。「すべての利害関係者の中で、リーダーたちは簡潔で直接的かつ的確なコミュニケーションを高く評価します。明解なコミュニケーションにより、プロダクトに関する専門性や知識を示すことができます。意思決定に影響を与え、イニシアチブへの支持の獲得にも役立つ可能性があります。」

Kabirは、リーダーたちとのコミュニケーションに役立つ以下のヒントを挙げています。

  • 自信を持つ: アイコンタクトを保ち、自分がそのプロダクトについての専門家であることを忘れないようにします。
  • よく考えて話す: 重要なポイントを強調し、メッセージが伝わるようにコミュニケーションを調整します。
  • 感情的にならずに対応する: 答える前に、質問を考える時間を取ります。
  • 簡潔かつ直接的にする: リーダーたちの時間は限られていることに注意します。
  • 次の4つのステップに従います: 「傾聴」し、「理解」し、「返答」し、必要に応じて「説明」します。

また、避けるべき一般的な落とし穴についても取り上げています。

  • 尋ねられた質問に答えない
  • リーダーを書面によるコミュニケーションで圧倒させる
  • 返答する前に立ち止まって考えるのではなく、感情的に反応する

「PMTとして、リーダーたちとのコミュニケーションは、多くの場合チーム全体の仕事や努力を代表しています」とKabir氏は説明し、こう続けます。「そのため、コミュニケーションの仕方がプロダクトの成功に大きな影響を与える可能性があります」。

改善を続ける

効果的なコミュニケーションは、習得したスキルです。Amazonは、PMTがこれらのスキルを磨くために使用できる複数のリソースを提供しています。「Amazonは、社員がより良いコミュニケーターになるために多額の投資をしています」とKabirは言います。「文章作成は誰もが持っているスキルではありません。習得するスキルで、練習して、利用できるツールをすべて活用する必要があります」。

書面と口頭の両方のコミュニケーションスキルを磨くことで、PMTは権力がなくても効果的に影響を与え、多様なチームをまとめ、お客様に喜ばれるインパクトのあるプロダクトを開発することができます。

Kabirが最後に述べているように、「覚えておいてください。効果的なコミュニケーターになるために生まれてきた人は一人もいません。これは、大学を卒業したばかりの人からJeff Bezosまで、誰もがここに至るまでに習得してきたスキルです。」