インサイトと感情に働きかけるストーリーテリングによってグローバルブランドを成長させる方法

2021年9月29日 | 投稿者: Brendan Flaherty、ライター、ブランドコンテンツ

この「私の最高のアドバイス」というシリーズでは、広告の専門家から、キャリアジャーニーで得た重要な知識、これまでに受けた最高のアドバイス、ブランドやビジネスの成長に役立つインサイトを教えてもらいます。

2012年、IPGのReprise DigitalのCEOであるDimitri Maex氏は、自著『データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」 ビッグデータからビジネス・チャンスをつかむ (Sexy Little Numbers: How to Grow Your Business Using the Data You Already Have)』の海外ツアーに出かけました。この本は、元上司のアドバイスに耳を傾けたことがきっかけとなり、彼が始めたブログから生まれました。そのアドバイスとは、「自分が情熱を傾けるプロジェクトのための時間を常に作るように」というものです。

長年にわたり、そのアドバイスによりDimitri氏は音楽制作、ファッション、オンラインリテール、オフロードバイク、コミュニティ、簿記など、さまざまな分野に関わりました。それにはもっともな理由があります。「情熱的なプロジェクトはあなたの人生を豊かにし、新しい経験に目を向けることができます」とDimitri氏は言います。「それらはあなたをぬるま湯に浸かった状況から連れ出し、学び続け、常に気を引き締めることができます。そうすると、時間をより適切に管理する必要が生じ、通常、予期せぬ方法であなたの仕事の役に立ちます。」

同氏は、ベルギーのアントワープに生まれ、アントワープ大学に通い、計量経済学を学びました。後にインドのザビエルインスティテュートオブマネージメントでMBAを取得しました。データとアナリティクスにおける彼の経歴は、アントワープ、ロンドン、サンフランシスコ、ニューヨークのクリエイティブエージェンシーやメディア企業でのリーダーの地位に就くのに役立ちました。Ogilvyの以前のダイレクトマーケティング部門であるOgilvyOneでは18年間勤務し、社長を務めました。

彼は常にデータやクリエイティブの共同作業を支持し、広告は世界中のどこであっても、人間の基本的な部分に触れることができると信じています。

今日のブランドはどのようにしてグローバルに広告を展開できるでしょうか?

それは絶妙なバランスです。ブランドは、地域の違いを認識し、それに基づいて行動できると同時に、異なる地域の異なる文化間の共通点に注目する必要があります。優れたブランドは両方とも非常にうまくやります。

まずは、文化を理解することです。個人的な観点から言いますと、私がインドに住んでいたとき、それは明らかに私が育った場所とは大きく異なっていました。しかし、英国から米国に引っ越したときでも、表面的にはとても似た文化のように思えますが、実際は全く違います。米国での最初の会議のとき、全くまとまりがないように感じたことを覚えています。全員が話して主張しており、英国と異なり、体系的とは言えませんでした。英国はもう少し階層的であり、議題が設定されていて、特定の立場にいる場合にのみ話すことができます。ですから、それに慣れる必要がありました。そして、それはブランドにも当てはまると思います。文化の違いを認識し、それに適応することの重要性です。

同時に、異なる文化間の共通点を見出したいと思うでしょう。結局、人間であることに変わりはないのです。私たちは人生において非常に似た感情、理想、願望を持っています。そして、それはブランドが真にグローバルに拡大することを可能にする共通点に訴えかけます。優れたブランドは感情を通してそれを行うことができるのです。

そのため、感情に働きかけるストーリーテリングは非常に強力ですが、多くの場合、感情の力はマーケティングにおいて過小評価されています。この分野ではかなり多くのリサーチが行われてきました。最も代表的な例は、英国の非常に権威ある組織である広告実務家協会(IPA)のものです。同組織が実施した調査では、感情に働きかけるキャンペーンは、単に合理性のあるキャンペーンまたは感情と合理性を組み合わせたキャンペーンのほぼ2倍の効果があることが示されました。そのため、感情に働きかける広告は非常に重要です。グローバルなオーディエンスに大規模につながりたい場合は特にそうです。

感情は変わりやすいものと見なしているデータ駆動型ブランドにどのようなことを伝えますか?

今日、データと創造性は誤って選択されています。この2つは連携します。それには数多くの側面があります。1つは、明らかにデータはインサイトを生み出し、クリエイティブなアイデアにつながる場合があります。

何年か前、私は英国を拠点とする航空会社のデータ駆動型キャンペーンに取り組んでいました。それはオーディエンスに関するインサイトから始まり、需要が実際にどこにあるのか、未開拓の最大の需要がどこにあるのかという純粋な分析でした。

フライトデータの分析により、英国のインド人海外駐在員コミュニティがインドに頻繁に飛行機で移動していることを発見しました。しかし、インドの航空会社のほうがインド文化をよりよく理解していると考えられており、私たちのクライアントである航空会社は、インドの航空会社を好むお客様から正当なシェアを得ていませんでした。そこで、5分間の動画をメインとした感情に働きかけるキャンペーンを展開することにしました。私たちは食べ物とお母さんを用いてインド文化を賞賛し、海外駐在員を招待して飛行機に乗ってお母さんを訪ねてもらいました。なぜなら、だれでももっと頻繁にお母さんに会いに行くべきですよね? この動画をYouTubeに載せると、それは心の琴線に触れ、普遍的なものに働きかけ、あっという間に広まりました。これは、インサイトがいかにクリエイティブで効果的なキャンペーンを生み出すかを示す例です。

さらに、クリエイティブの実験を行うえで、データには大きな役割があります。KPIを明確にし、効果測定に厳密に従えば、クリエイティブの自由を手に入れることができます。それはとてもエキサイティングな分野だと思います。失敗しても、早い段階で失敗するのであれば構いません。厳密なインサイトと効果測定を活用すると、さまざまなことを非常に迅速に試すことができます。

私の経歴を踏まえると、私はデータの進化をとても支持していますが、その欠点の1つは、マーケティング担当者がしばしば説明責任と有効性を混同していることです。それは実際に成果をあげるものを測定できているということではありません。短期的な効果測定、特にパフォーマンスに焦点を合わせることは、時には悪い選択につながります。長期的な戦略はそれほど簡単に測定できないため、追求されていません。このことはマーケティングが一般的に抱えている問題です。

マーケティングにおいて、私たちは組織の需要側で行動しています。供給側では、私たちは設備に資金を投入できるし、利益の面で何を刈り取るのかを把握しています。マーケティングではそのように機能してはいないと思われるでしょう。 それは人間の意思決定を経ていて、物事をあいまいにしています。しかし、それがうまくいかないという意味ではありません。

広告主はブランドとパフォーマンスのバランスをどのように取るべきでしょうか?

ここ数年の間に起こったことは、ブランドとパフォーマンスを比較して、マーケティングファネルを見ると、真ん中が空洞化しているということです。各企業が実際にブランドとパフォーマンスの費用のどちらかを選んでおり、ファネル上部とファネル下部、またはカスタマージャーニーの始まりと終わりの間のつながりを見失っているようなものです。それが問題です。ブランドとパフォーマンスが切り離されると、その途中でお客様を失うことになるからです。

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— Dimitri Maex氏、CEO、IPGのReprise Digital

実は、ファネルの真ん中が本当に興味深いと思います。それは、人々がブランドを意識することから、実際にブランドと関わるまでのプロセスにおいて、何が人々を動機付けるのかを理解する厄介な中間地点です。データと創造性によってさらに引き付けるにはどうすればよいでしょうか?また、最終的にどのように購入につながるのでしょうか? デジタルでは、そこが非常に豊かな領域になってきており、多くの最高マーケティング責任者が今、この問題、そしてブランドとパフォーマンスの間の誤った選択に気づき始めています。ブランドとパフォーマンスは連携させる必要があるのです。

今日、ファネルが機能していないことについて多くのことを耳にしますが、ファネルは連続したジャーニーであるべきものと捉えられていなかったのです。消費者は時間が経ってもあまり変わっていません。100年前、人々の行動は全く直線的ではありませんでした。今日では、ファネルのさまざまなポイントをより可視化でき、それは直線的なプロセスではなく、むしろ消費者が最初に目にして購入するまでの一連の心の状態であることが認識されるようになりました。マーケティング戦略は段階ごとに異なるマーケティングタスクに適応させる必要がありますが、それは変わっていません。

ブランドはカスタマージャーニーにおいて、どのように認知度を購入につなげればよいでしょうか?

Reprise Digitalでは、ブランドやクライアントのためにカスタマーフローに関するアイデアを生み出す際に、エクスペリエンス、メディア、コンテンツという3つの要素に重点を置いています。

第1の柱であるエクスペリエンスは、カスタマーエクスペリエンスでのストレスを取り除くことです。それは、所有しているアセットを頻繁に最適化することです。それが所有するWebプロパティ、SEO、UXのいずれであっても、最初のインプレッションから購入までのカスタマーエクスペリエンスでは可能な限りストレスが少なくなるようにします。ブランドとして、それはおそらく最初に取り組むべき分野です。

第2の重点の柱はメディアです。これは、より多くのお客様がそのエクスペリエンスを通じて移動するのを促すのに役立つ部分です。要するに、カスタマージャーニーごとに調整する方法を用いて、あらゆるデジタルチャネルにメディア費を配分することです。それはカスタマージャーニーを理解することだけではありません。カスタマージャーニーの各段階において、チャネル全体およびチャネル内でメディア費をさまざまな方法で配分することも大切です。これは、今日の多くの企業が大きな機会を見出せる領域です。

そして第3の柱はコンテンツです。メディアが消費者にメッセージを広げるのに対し、コンテンツは関連性を高めることにより消費者を引き込むことができるものです。私にとって、これら3つの柱がカスタマーフローを推進する鍵です。

コンテンツはカスタマージャーニーをどのようにサポートすべきでしょうか?

コンテンツは流動的であるべきです。「3」が特別な意味を持つ数字なのですが、私の考えでは、これにも3つの特性があります。1つ目は、カスタマージャーニーに沿って移動するということです。明らかに、コンテンツはブランドのカスタマージャーニーの各段階で異なる役割を果たします。最初は、より多くの情報提供や願望を引き出すものであるかもしれませんが、カスタマージャーニーに沿って変化させなくてはなりません。つまり、カスタマージャーニー全体をカバーするコンテンツ、および情報、エンターテイメント、実用性などの幅広い特性を持つコンテンツが必要です。

流動的なコンテンツの2つ目の特徴は、掲載されるフォーマットに適応しなければならないことです。ところが、メディアの断片化により、非常に多くのフォーマットがあり、メディアとコンテンツフォーマットは非常に多くの技術革新が行われているため、これは非常に困難です。したがって、これらのメディアフォーマットをよりよく理解し、そのフォーマットのベストプラクティスを把握して、それに応じてコンテンツを適応させることです。メディア代理店は、以前はコンテンツ作成の分野ではなかったため、今日のメディア代理店は実に興味深い場所となっています。しかし今、クライアントは私たちにもっとその分野に関わることを求めています。なぜなら、メディア代理店はメディアの性質を本当によく知っているからです。そして、メディア代理店はそれぞれのプロパティで何がうまく機能し、何が機能しないかを証明するデータを持っています。

コンテンツが行うべきことの最後は、没入型体験を提供することです。消費者を感情面において引き込む必要があります。そこで創造性が機能します。創造性は大規模なブランド構築のためだけのものではありません。カスタマージャーニーの各段階で活かすことができます。それに応じてクリエイティブチームの意欲をかき立てれば、創造性は実にどこでも活用できます。

オーディエンスのいる場所を見つけ、次のステップを予想して、時には行動を促したりガイダンスを提供したりすることができれば、それがまさにそのフローを生み出すことのすべてだと思います。クリエイティブなアイデアを評価しているとき、私はいつも「消費者は次に何をするだろうか?」と尋ねます。 そして、優れたブランドは、常にお客様を羅針盤にすることが重要であると知っているのです。